茨城高専、AI未来探究プロジェクトを始動
未知の課題を解決せよ!───高専生が拓く、生成AI教育の新たな可能性
茨城高専発、生成AIを活用したプロジェクトベースのアクティブラーニング(茨城高専・AI未来探求プロジェクト)に本校1年生20名が参加し、学内コンテストにて成果発表を行いました。このプロジェクトは、生成AIの教育現場への積極的な適用を試みる、という極めて先駆的な取り組みです。
■活動の概要
本プロジェクトは、以下に示す3つのフェーズで構成されます。活動期間は2024年12月~2025年3月という短い期間でしたが、密度の濃い充実した活動が実現しました。
1. まず学生たち自らが、SDGsに関する課題を設定し、その課題解決アイデアをKJ法や校外学習を通じた、従前の技法で考案します。この段階では、生成AIを使用せず、人間の力だけで行います。その後、人間同士でフィードバックを行い、アイデアを構造化していきます。「準備」のフェーズです。
2. 次に学生たちは、生成AIを活用し、そのアイデアのブラッシュアップを行います。「AIへの丸投げ」ではなく、自身の問いを深堀りし、アイデアを具現化していくために、生成AIを活用します。最も思考力が鍛えられる、「悩み」のフェーズといえます。
3. 最後に学生たちは、学内コンテストにて自身のアイデア発表を行い、教員からフィードバックをもらいます。これに加えて、参加学生同士の相互フィードバックの機会も用意されており、これは合宿形式で行います。自分たちのアイデアを俯瞰し、新たな気づきや課題を発見するという意味で、まさに「未来への種まき」のフェーズです。
■コンテスト結果
〇最優秀賞 :「重度障がいのある方とのコミュニケーション支援装置の開発」
チームメンバー:橋口 日南さん、渡邊 陽子さん
このほか、以下のチームが、受賞対象となりました。
校長賞 :「粒子小型検出器を用いた応用例の提案」
チームメンバー:濱本 夏芽さん、深谷 悠喜さん
優秀賞 :「生成AIで考える新たな浸透膜~高機能化への探求~」
チームメンバー:髙久 まどかさん、飛田 小結さん
優秀賞 : 「昆虫のエネルギー効率に関する研究」
チームメンバー:新沼 哲さん
優秀賞 :「微生物燃料電池についての考察」
チームメンバー:吉田 苺香さん、篠田 夏蓮さん
■プロジェクトの様子
▶KJ法を用いて、自身のアイデアの見える化・構造化をしました。

▶科学技術館および日本科学未来館での校外学習を通じて、生成AIの活用方法と限界を学びました。

▶2025年3月28日に学内発表を行いました。

<参加した学生のコメント>
「今回の経験は、卒業研究はもちろん、将来のプレゼンテーション能力向上においても、非常に有益な機会となりました。」(1年生 岡野 修也さん)
「学外のコンテストへの参加を目指す過程において、このプロジェクトは大変価値のある経験でした。」(1年生 大崎 陽介さん)
「卒業研究や、そのほか発表などを行う際の良い経験になりました。また、AIの使い方や性能についても知れたので、今後も選択肢の一つとして、相談や質問に活用していきたいです。」(1年生 川嶋 優剛さん)
「本プロジェクトは、生成AIの巧みな活用方法を知ることのみならず、自分の新たな強みを発見する機会にもなりました。この経験は、部活動の運営や卒業研究などに生かすことが出来る、とても有意義なものでした。」(1年生 川村 蒼太郎さん)
「高校1年生という早い段階で、研究発表の機会を得られたことは、非常に貴重な学びとなりました。また、チームメンバーとの協力関係も深まり、有意義な経験となりました。」
(1年生 髙久 まどかさん)
「先行研究のレビューや研究課題の設定を通じて、研究の難しさと同時に楽しさも実感することができました。」(1年生 飛田 小結さん)
「自分のやりたいことに楽しく取り組むことができ、アイデアの幅も大きく広がりました。新たな発見や刺激をたくさん得られた、充実した時間でした。」(1年生 濱本 夏芽さん)
▶TAのコメント
「生成AIの活用ノウハウを、後輩に対して十分に提供できたと思います。1年生のユニークな使い方に触れたことで、私も多くの学びを得ることができました。」(2年生 國井 真帆さん)
▶指導教員のコメント
「私は民間企業出身ですが、茨城高専への赴任当初より、学生さんのレベルの高さにいつも驚かされております。彼・彼女たちは、SDGsに関する問題意識が高く、しかもその問題に対する技術的な解決アイデアを、漠然としながらも持っているのです。本来は、こうした学生さんのアイデアを、教員が伴走しながら、精緻化・具体化していくことが理想です。しかし現実の資源制約を考えると、それらをすべて実行するのが難しい面も否めません。学生さんのアイデア・シーズを発芽させるうえで、生成AIが有効な技術になり得ると考え、今回のプロジェクトを企画・立案いたしました。参加頂いた学生さんをはじめ、温かいご支援をくださった関係先の皆様に心より感謝申し上げます。」(一般教養部 片岡 隆史 先生)
「最終発表会では1年生とは思えないほど立派な発表が出揃い、感心しました。課題設定には個性豊かな視点があり、どのチームも生成AIを上手に生かして取り組んでいました。特に印象的だったのは皆さんが非常に能動的でポジティブに生き生きと活動していたことです。短期間で生成AIを使いこなし、堂々と発表する姿には大きな成長と可能性を感じました。関わってくださった教職員の皆さま、温かく支えてくれたTAの先輩方にも、心より感謝いたします。」(専門共通教育部 二田 亜弥 先生)
■今後の展開
本プロジェクトは成果発表の場を、校内から校外へ拡大していく予定です。次年度は、学会やコンテスト発表等の対外的な成果を目標に活動を継続していく予定です。
■プロジェクト参加学生
岡野 修也さん、川嶋 優剛さん、小川 晄永さん、小川 瑛太さん、中垣 陽斗さん、
橋口 日南さん、深谷 悠喜さん、渡邊 陽子さん、篠田 夏蓮さん、
髙久 まどかさん、飛田 小結さん、本間 奈々美さん、小田倉 柊人さん、
川村 蒼太朗さん、遠峰 康貴さん、新沼 哲さん、濵本 夏芽さん、渡部 篤紀さん、
大崎 陽介さん、吉田 苺香さん、川染 有哉さん(TA)、國井 真帆さん(TA)
※掲載記事における学年や所属は、2024年度3月時点のものです。