茨城高専、勝田中等教育学校と共同で生成AIサマースクールを実践

 茨城工業高等専門学校は、STEAM教育(注1)の一環として、2025年8月26日、勝田中等教育学校にて生成AIを活用したPBL(注2)である「KOSEN×勝田中等サマースクール」を実施しました。本授業は、生成AIを「思考力を高める道具」として活用するための教育プログラムです。高専生の支援の下、中学生たちが生成AIを活用し、地域活性化のアイデアを考案・発表しました。

サマースクールに参加していただいた学生の皆さん

活動の概要
 このプロジェクトは、以下の3つの活動で構成されます。
①生成AIリテラシー教育:教員による基調講座
②アイデア創出演習:高専生と教員による共同講座
③生成AIを活用したグループワークと発表:高専生と中学生グループとの協働作業。生成AIを活用して、中学生たちが自分たちのアイデアをブラッシュアップして発表を行う。

ステップ1. 生成AIリテラシー教育の様子
ステップ2. アイデア創出演習の様子

グループワーク
▪中学生21名(3〜4名×6グループ)が地域活性化(廃棄果物や廃校の利活用法提案)をテーマにアイデアを創出し、グループごとに発表しました。KJ法(注3)を用いて、自身のアイデアの見える化・構造化を行いました。

ステップ3. 生成AIを活用したグループワークの様子

〇アイデア発表
各グループには高専生1〜2名がティーチング・アシスタント(TA)として参加し、中学生のAI活用補助、発表支援を行いました。発表では、市内の廃校を「昼はコンセプトカフェとし、夜はお化け屋敷として活用する」というユニークなアイデアが発表されました。

ステップ3. 受講生(勝田中等教育学校・学生)によるアイデア発表の様子

〇学生のコメント
◾️受講生(勝田中等教育学校・学生)のコメント
「生成AI にすぐに質問するのではなく、まず自分で考えてから、尋ねるようにしたいと思いました。」
「先輩方はすごく優しくて、一緒に作業していて楽しかったです。」

◾️TA(茨城高専・学生)のコメント
「他の誰かに教えることで、自身の理解が深まる感じがしました。相手に何かを考えて欲しい時は、具体的に例示したり、分かりやすい言葉で説明することが必要だと感じました。」
「その人の理解度や考え方は異なるので、受け手に合わせた説明が必要であることを実感しました。」

〇指導教員のコメント
 答えに辿り着くまでに、悩んだり思考したりする時間は決して無駄ではありません。それは、思考力を養う上で必要なプロセスだからです。他方で、高校生が一人で困難な課題(ill-structured problem)に挑むには勇気が必要です。この挑戦を後援するものとして、生成AI活用が有効ではないかと考え、この取り組みを実践いたしました。受講生(中学生)の皆さんから、『勉強になった』『楽しかった』という好意的なコメントを多数いただき、企画は大成功だったと思います。ご支援いただいた関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。(茨城高専・片岡 隆史 准教授)

「今回は本校にて講義・グループワークを実践していただき、ありがとうございました。生徒達は、AIの良い点と悪い点を学び、これからの未来に必要な知識技能を育てるための第一歩を踏み出しました。また、高専の先輩方との活動を楽しみながら学ぶことで、異校種・異年齢の交流の良さ、コミュニケーションの大切さも知ることができました。生徒達が、この経験を活かし、地域と世界を結ぶグローカルリーダーとして活躍する姿を期待しています。」(勝田中等教育学校・今村 美里 先生)

AI未来探究プロジェクト
 今回の活動は、AIを活用したPBL(AI-PBL)である「茨城高専・AI未来探究プロジェクト」の一環として行いました。プロジェクトのシンボルマークは、本校学生の”安田 れん”さんによるデザインです。以下は安田さんの製作者コメントです。

「シンボルマークを制作するにあたって、チームの活動の様子を見学したり、先生のお話を聞いたりしました。そこで感じたみなさんの創造性と、未来への期待を込めて、モチーフは茨城高専の校章でもある梅の花の蕊としました。みなさんの研究が花を咲かせ実を結び、このシンボルマークと共に未来へ繋がっていくことを願っています。」(茨城高専・3年情報系 安田 れん さん)

AI未来探究プロジェクトのシンボルマーク


〇サマースクールに参加した茨城高専生の皆さん
 橋口 日南さん(2年1組)、大崎 陽介さん(2年1組)髙久 まどかさん(2年2組)、
 中垣 陽斗さん(2年3組)、本間 奈々美さん(2年3組)、岡野 修也さん(2年4組)、
 山脇 惺太さん(2年4組)、菅野 友理奈さん(2年4組)、濵本 夏芽さん、(2年5組)、
 國井 真帆さん(3年情報系)

注1: STEAM教育とは、Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics 等の各教科で の学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育方法である。

注2:PBL(Project-Based Learning)とはプロジェクト型の学習方法である。複雑で困難な課題をプロジェクトとして捉え、それらに対して、学生が探究的かつ比較的長期間に取り組むことを特徴とする。

注3: KJ法とは文化人類学者の川喜田二郎によって考案された、定性的データの分析技法である。付箋やカードにデータを書き込み、それらを分類・構造化することで、問題分析やアイデア創出を容易にする。

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