スマート農業(生物資源産業)に関する講演会を実施しました

 令和5年10月19日(木)、化学・生物・環境系5年生を対象とした「生物資源工学」の授業の一環で、スマート農業(生物資源産業)に関する講演会を実施しました。
 講師には、カモシー工房(日立市大久保町)の鴨志田 慎悟 社長をお招きし、同社で行っている農業用ドローンを活用した土壌調査、肥料・農薬散布等についてのご講演、また飛行許可がなくても操縦できるマイクロドローンの実演操作をしていただきました。

講演テーマ:「ドローンを活用したスマートセンシング農業」

1. 農業の現状について

 農業人口の低下、農業従事者の高齢化、日本の食料自給率の低下などの問題を、最新のデータと共に学んだ。ロボット技術やICT(情報通信技術)を活用した重労働からの解放と労働時間の短縮が、農業従事者だけでなく、企業や政府から期待されている。企業にとっては新たな技術・製品を開発して、国内・世界で売り込むビジネスチャンスとなっている。

2. ドローンを使った土壌調査、それに応じた肥料散布

 カモシー工房では、「ドローンを使ったエンターテイメント」「空中撮影」「人がいけない場所の点検調査」「レース参加」など、ドローンの専門家として幅広い活動を行っている。ドローンの農業での需要の高まりを受け、農場の土壌調査、それに応じた肥料散布を行っている。物体に太陽光が当たった後の反射光を波長ごとに検出する「マルチスペクトル画像システム」で、作物の健康状態を明らかにしてピンポイントで肥料を散布し、化学肥料の削減と生産量upを実現した。

3. ドローンを使った果樹りんごの受粉

 りんごは、自家不和合性といって同じ花・同じ木の花粉が雌しべに受粉することを好まず、通常別の木からの花粉により受粉が行われる。自然環境では虫が受粉を媒介するが、農場では人の手による人工授粉が行われ、作業者が脚立から落ちるという事故も多い。カモシー工房では花粉をドローンで散布することにより、高効率・短時間・安全な人工授粉を実現した。

4. ドローンを使った農薬散布、その問題点、法的規制など

 作物を育てるためには、害虫がいない、雑草が育たない環境を作る必要がある。そのために農薬が使われるが、人の手で農薬を撒く際には作業者への薬害がしばしば起こる。カモシー工房では、ドローンを使った農薬散布により茨城県の農業に貢献している。ドローンを使うことは農業に多くのメリットがあるが、デメリットもある。農薬散布では、散布時の空気の流れにより薬剤が周辺の非対象物に付着する「ドリフト」が起きうる。また、ドローンにより農薬散布を行うには、操縦者が国土交通省に特定飛行申請を行わなければならない。(農薬や肥料の散布が、航空法が制限を行う「危険物輸送」「物件投下」にあたるため)

5. 農業用ドローン2台拝見とマイクロドローンの実演

 今回搬入して下さったカモシー工房の農業用ドローン2台(NTT eドローン社製及びカモシー工房自作)を拝見しながら説明を受けた。また飛行許可がなくても操縦できる(= 100 g未満)マイクロドローンを教室で実演していただき、参加学生も操縦を体験することができた。
※100g未満でも小型無人機等飛行禁止法(警察庁)は順守

参加した学生の感想

 学生からは、「マルチスペクトル画像システムで植物の生育状況を瞬時に調査できるのが素晴らしいと感じました。」、「ドローンで農薬を撒くことにより圧倒的な時間短縮と散布者の安全の確保といったメリットがあることを知りました。」といった感想が寄せられました。

同授業「生物資源工学」を担当する先生から(専門共通教育部 横山 英樹 准教授)

 今回の講演で、RTKシステムなど「cm単位」の正確性での散布技術が開発されていることを知りました。分野外の技術を取り入れて生物資源の有効利用に取り組むことが、持続可能な社会への貢献や、ビジネスチャンスにつながることを学生には知ってほしいです。

 ご講演いただきましたカモシー工房の鴨志田 慎悟 社長、この度は大変貴重なお話をありがとうございました。茨城高専では、工業技術を、スマート農業分野にも活かせる人材の育成に努めていきます。

\本校広報室公式X(旧Twitter)はこちら!/

タグ: