2021年度茨城高専学生会執行部企業訪問Vol.01『株式会社菊池精器製作所』

はじめに

 学生会執行部では、地域の皆様と積極的に関わり、地域の魅力を幅広くお伝えするとともに、地域企業と茨城高専との連携の可能性を発見し、またこれまでやってこなかったことを実践することで相互理解を深め、ブランド力の向上につなげていきたいと考えております。そこで、地元の企業様を訪問してインタビューを行ったり、意見交換などをさせていただいております。
 学生会執行部による企業訪問/インタビュー第1回目は、ひたちなか市にある株式会社菊池精器製作所です。今回は、菊池精器製作所の菊池宏昭社長に企業の説明・案内していただくとともに、インタビューに応じていただきました!

株式会社菊池精器製作所について

 1963年に発足した株式会社菊池精器製作所は、茨城高専と同じひたちなか市にある精密板金部品加工、精密切削部品加工、電子機器組立を行う会社です。主に製造している製品は、小惑星探査機『はやぶさ』が運んだ物質の測定や警察でも利用された電子顕微鏡や、医療機関で利用される検体検査自動化システムがあります。創業当時は、なんと布団屋さんだったそうです。その後、布団屋と菊池精器製作所に会社が分かれ、金属の加工などを受注し始め、現在に至ります。
 菊池精器製作所の最大の強みは、この受注した精密機械の部品を製造・加工するだけでなく、組み立てまでを全て自分たちで行う総合受託生産を行っていることです。これは、受注元が製品に関わる数多くの部品をそれぞれ専門会社に発注して、集めて、組み立てなければならないやり方よりも、一括でお願いし発注・製造を効率化したい企業のニーズに対応しているのです。

企業見学レポ

▲菊池社長から説明を受けました

 実際に、お仕事をされている工場を見学させていただきました。ほぼすべての工程で、最新鋭の大型装置がたくさん導入されていることが大きく印象に残りました。
 例えば、工程を設定しておけば人間が操作しなくても自動で金属を切り抜いてくれる装置や、ロボットによる作業で完結する装置がありました。様々な装置がたくさん設置されている工場の中には、PCがたくさん設置してある部屋もありました。
 菊池社長にお話を伺ったところ、その部屋で受注した物品の設計図を前述の装置に送ったり、作業の進捗状況を把握し、今後の生産計画を立てたりといった生産管理を行う極めて重要な場所とおっしゃっていました。この部屋を菊池精器製作所の『心臓』と社長が例えていたことが印象的でした。
 また、この場所は高専を卒業された社員の方が全員配属されているそうで、菊池社長によると、高専卒生は菊池精器製作所の非常に重要な戦力とおっしゃっていました。

▲ロボットによる作業の説明を受けました

社長へのインタビュー
Q1. 企業見学中に、建物が建てられていない空き地がありましたが、それは何なのでしょうか。

現在行っている事業の拡張や、新たな事業を実施するときのスペースのために予め広い土地をとっています。そのため、必要になれば新たな工場をその空き地に建設します。どのような用途で建設するかを考える必要があるため、企業の将来を常に考えています。

▲菊池精器製作所内の実際の空き地

Q2.社長のご趣味はなんでしょうか。

2歳の娘と遊ぶことが最近の楽しみでしょうか。昔は、よく将棋やチェスをやり、将棋には特にハマっていました。その他にも、ゴルフや草野球もやっています。あと、お酒が好きなのでよく飲みます。(笑)

Q3.工場を見学させていただいたところ、タブレットが導入されていることに気づきました。他にも導入されているものはありますでしょうか。

iPadは全部で50台ほど導入しました。ほかにも、LINE WORKSを導入したりしました。これによって、従業員同士での情報共有がとても簡単になりました。今までは、電話で行っていたのですが、これだと仕事を一回止めて連絡をしなければならず、時間がもったいなかったです。しかし、これらを導入したことで、情報を送れば、確認は仕事が一段落したあとでも大丈夫になるわけです。
また、iPadを用いることで今まで紙で扱っていた資料をペーパーレス化することになり、書類の閲覧・管理が容易化するほか、環境へ貢献できることになりました。
このように、私達はDX化(デジタルトランスフォーメーション)へ積極的に取り組むことを会社の2022年度の目標にしており、そのようなデジタル化/ロボットの導入などについては製造業では特に重要だと考えています。

▲工場の稼働状況も一目瞭然で確認できるシステムが導入されている

Q4.そのようなDX化に対する従業員のみなさんの反応はどうでしたでしょうか。

最初は、抵抗感も大きかったと考えています。人間はどうしても挑戦することが苦手だと思っているので、それも前提だとして実施しました。
また、私達の会社は年齢層が厚いため、デジタル機器の操作に不慣れな方にはその人に応じて指導をし、そのような機器がなくてもできる仕事を割り振るようにして対応させていただきました。
逆に、若い方々はすぐに対応していただけたので、そのような点に関しては皆さんのような高専生に非常に期待しております。

Q5.ロボットの導入等で人間の労働者は将来必要なくなるとお考えでしょうか。

ロボットなどによってできる仕事は多くなると思いますが、それに応じて人間にしかできない仕事も残るはずです。そのため、私はその仕事にのみ人を割り当てたいと考えています。例えば、ロボットを導入したからといってロボットの段取りやプログラムなど人間が必要な仕事は残っているのです。ただ、一度完了すると、人が帰宅してからまた出勤するまでの時間でもロボットが仕事をするようになり生産性は向上します。
当社における、工場の自動化はまだまだ検討中の段階です。

Q6.となると、人間の仕事が減る心配はないということでしょうか。

それは違うと思います。実際に銀行など人が不要になってくる仕事はどんどん増えていくでしょう。
だからこそ、ここはロボットが、ここは人間がというようにする仕事の切り分け、取捨選択が大事だと考えています。

Q7.キャリアについて悩んでいます。企業だからこそ得られる知識はなんでしょうか。

今はグローバル化の進行で、広い視野を持たなければなりません。学校にいるということは自由にいろいろなことにチャレンジできる環境にいるということです。できるときに自分の興味があるものに接してみるのがいいと思います。実際にそこに接してみないとわからないことも多いと思うので、考えるより実践!が大事だと思います。
私は、工場等で使われている設備の会社で10年間営業、開発など様々な業務に携わりました。その経験はやはり企業経営する上で重要なものになっています。

Q8.環境への取り組みに関して教えて下さい。

現在はソーラーパネルの設置を行っていますが、CO2の削減への取り組みを推進していくため、社用車をすべてEV車に切り替えていきたいと思っています。
また、大手(日立グループ)ぐるみで削減を目標にしているため、そこに合わせて取り組んでいくと思います。

Q9.Withコロナで変化したことはありますでしょうか。

リモート環境の整備を行い、リモート勤務ができるようにしました。実際にリモート勤務を行っている従業員もいます。これで、出張が大きく減少しました。すべてオンラインですね。その他にも、商談や出店イベントもすべてオンラインとなりました。
これでよかったこともあります。それは海外の方と連絡を今までより取りやすくなったことですね。

Q10.海外市場への展開は行っていますか。

ベトナムへの展開は検討しましたが、コロナでなくなりました。

Q11.Withコロナで従業員とのコミュニケーションで気をつけていることは何でしょうか。

密になるような集会はできなくなってしまったので、これに取って代わることを考えて実施しました。例えば、オンライン(Zoom)での交流会、ビンゴ大会ですね。
当社は初代社長のときから創立記念日(12/24)に全従業員に鮭を配っているのですが、去年は、うなぎも配り、忘年会の代わりにケーキも配りました。

Q12.一律して行っている危険防止の規定はありますか。

回転物の取り扱いは軍手の着用をしないなど本当に気をつけています。
また、定期的に現場を回って危険なものの取り扱いや環境をチェックしています。最近では、重量物の取り扱いについて、クレーン使用の目安を示す規定を定めました。

Q13.従業員に求める人物像を教えて下さい。

素直さと人格者であることです。私が面接するときは、その人の考えを聞くことを大切にしています。
私は親孝行がとても大事だと考えているので、4月には新入社員だけでなく全従業員に対して親孝行月間と定めて、親孝行を奨励しています。

Q14.地域の企業/工場で連携していることを教えて下さい。

GLIT(グリット)という、ひたちなか市中心の中小企業の団体を結成しています。ここでは、受けた受注の中で自分の所(自社)ではできないことがあれば、所属している他の会社へ任せてチームで取り組んだりしています。この組織で、グローバルな市場へも対応可能だと思いますし、自社製品のようにつくれることが魅力だと思っています。
例えば、アルコール消毒液の台(足で踏むとでてくタイプ)についても、大手が参入する前にGLITで製造しました。

Q15.会社と家族の両立について教えて下さい。

昔は、夜遅くまで勤務することが続いていたのですが、それだと人生的にマイナスだと感じました。やはり、家族があっての自分がいると思いますので、家族というモチベーションは本当に大事だと思います。
また、コロナで飲み会が減り、リモートで家族と関わる時間が大きく増えたと思います。

Q16.家族ができたことで、社長の体に変化や気をつけることはできましたか。

子供が生まれてから、タバコをやめました。また、結婚してから太ってしまったと感じていますので、痩せることかな(笑)

Q17.社長の最終ゴールについて教えて下さい。

私は、事業を大きくすることが最終ゴールではないと思います。
やはり社長として従業員の生活を担保することでしょうか。そのためには、もっと利益を出せるようにする必要があるでしょう。そのためなら、事業を拡大してもいいですし、新事業に参入するのも検討しますね。
第一に従業員!人生に寄り添っていけるようにしたいです。

Q18.高専生の印象・期待することを教えて下さい。

印象は地頭・応用性がいいことです。あと、すぐ動いてくれることかな。ここは大学生とは違うところで、高専生のすごくいいところだと思います。
そのため、会社にとってはとても頼りになる存在です。
期待することは、経営に参画することです。中小企業であれば大企業に比べて会社経営に携われるチャンスがあるので、ぜひ、挑戦してほしいと思います。

茨城高専との関わりの展望

 現在、菊池精器製作所は、茨城高専でA-LABO(加速器を作成するサークル)で部品の作成に携わっていただいております。今後は、専攻科のMIPPEプログラムに参加予定となっております。
 菊池社長は、ぜひ茨城高専生には地域企業と関わってほしいと思っているとともに、視野を広く持って、世の中を広く見渡してほしいとおっしゃっていました。
また、今回紹介した工場の設備もぜひ様々な高専生にも体験してほしいというお声をいただくことができました。そこで、執行部では高専と企業様の持つ技術を共有し合えるような企画を計画していきたいと思います。

おわりに

 今回は、ひたちなか市の菊池精器製作所を訪問し、菊池社長にインタビューさせていただきました。現代の会社のニーズに合わせた事業展開や、それを実現するための最新鋭の機械がとても印象的でした。また、菊池社長の「やったもん勝ち。どんどん挑戦していってほしい。」というお言葉が、私達の背中を押してくださいました。
 学生会執行部では、地域の企業のみなさまと関われる機会を生み出したいと考えております。執行部が企業様との窓口になりますので、みなさまのアイデアをぜひお知らせください!
また、この度見学/インタビューにご協力いただきました菊池精器製作所の菊池宏昭社長をはじめ、全ての従業員の皆様に深く感謝申し上げます。

▲執行部と菊池社長


【今回、訪問させていただいた企業の情報】株式会社 菊池精器製作所

文責:学生会執行部 

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