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人文科学科 井坂友紀 准教授

理系だからこそ経済について学んでほしい

専門的な技術や知識を身につけるだけでなく、会社の経営状況、市場動向、国の予算や政策、 規格や規制をめぐる議論など、幅広く知ることの大切さを高専生に伝える。

教えていらっしゃる教科は何ですか

 専攻科生対象の経済政策、本科4年生対象の経済概論、ほかに英語も担当しています。英語は専門ではないのですが、私の研究は大量の英文資料を読みこむことが大前提となるものなので、道具としてずっと英語を使ってきたということが背景にあります。2015年度からは低学年の現代社会や地理も担当します。

理系である高専の学生に経済学は必要ですか

 経済学は、日々の社会経済現象を対象とするとても身近な学問です。エンジニアには関係のない話、ということは決してありません。むしろ工学を専門とする高専生だからこそ、経済について学ぶことが重要であると思っています。

それは具体的にはどういうことですか

 例えば大きな会社でいうと、企画部なんかにいわゆる「文系」の人間がいますよね。彼らは自社の経営状態はもちろんのこと、市場動向や取引先のこと、製品にからむ規制・規格をめぐる議論、国の予算編成のことなど、幅広く知っていて、人脈豊富、弁も立つ。高専の卒業生たちは現場の技術では負けないけれども、それだけではひょっとすると彼らにいいように使われてしまうかもしれません。それは卒業生自身にとってはもちろん、会社にとっても問題です。経済に関する最低限の知識を持ち、視野を広げて、彼らといい意味のケンカ(対等に議論)ができるようになって欲しいわけです。
 また、技術さえ優れていれば全てがうまくいくというものでもありません。たとえばトヨタの燃料電池車が世界に先駆けて市販されたわけですが、水素ステーションなどの社会インフラがどうなるか、あるいは関連する規格の標準化がどうなるかで今後の展開は全く変わってくるでしょう。技術周りの動きも常に捉えていなければいけないわけで、そこに必要なのは広い意味での「経済」の知識だと言えます。

授業ではどんな工夫をされていますか

 はじめはやはり「なんで、高専で経済をやらなければいけないんですか?」とか「どの株を買えば儲かりますか?」とか言われてしまいます。経済について学ぶことの意味をどうやって理解させるか、真剣勝負です(笑)。初回の授業では、今自分たちが着ているシャツがどうやって生み出されてきたかを議論してもらいます。材料はどこから来て、どう加工されて、どう販売されて、と。自分たちが生きていく上で不可欠なモノやサービスがどう やって生み出されて、どうやって分配され消費されるか、あるいはされるべきかを考える学問がまさに経済学ですから。これから就くはずの自分の仕事の意味を考える上でも、とても重要なことだと思います。
 専攻科の授業では、毎回新聞記事を配っています。当然手間はかかりますが、毎日、経済新聞はくまなくチェックしクリッピングをします。就職先になりそうな企業の経営状況や動向、モノづくりのあり方の変化、企業が求める人材像や採用の状況など、高専の学生にとって身近に感じられ「経済って自分たちの生活や職業人生に深く関わることなんだ」とわかってもらえるような題材を選んでいます。

学生さんの反応はどうですか

 「新聞を読む(読める)ようになりました」という声が一番うれしいです。正直、「経済学が好きなりました」といわれるよりもうれしいかもしれません。「経済学部に進学しようと思います」という学生もたまにいますが、そういう学生があんまり増えたら怒られちゃいますよね(笑)。経済は身近なことなんだ、技術を知っているだけじゃダメなんだ、ということが伝わって、工学だけでない幅広い分野に興味を持つようになってくれたら、それに勝る喜びはないです。

教え子からひとこと  物質工学科5年 古川将光さん

 井坂先生は経済がご専門で、理系の学生に不足しがちな、けれども社会で間違いなく必要とされる経済知識を教えていただいています。専門学科の先生方とは違う視点を持った先生の下で,私は環境規制について研究を進めています。社会人経験もあることから、メールの書き方や挨拶等についても指導は厳しいです。一部の学生からは「鬼!」と恐れられている井坂先生ですが,日々多くのことを学ばせてもらっています。

先生ご自身のことを教えてください

 生まれは神奈川県です。父方はもともと水戸の出で、井坂という苗字はそこからのようです。博士課程を2006年に終え、2010年4月に茨城高専に来ました。その間の4年間は金融系の産業別労働組合の職員として働きました。労働政策に関する動向を調査したり、業界に直接かかわる政策や規制について提言や関係各方面への働きかけを行ったりといった仕事をさせてもらいました。馴染みの駅は、新御茶ノ水、霞が関、国会議事堂前あたりです(笑)。いろいろ大変でしたが、本当に勉強になりました。このときの社会人経験が今の自分の教育や研究活動上の大きな強みになっていると思います。

■参考文献

井坂友紀「非経済系学生への経済教育に関する一考察―工業高等専門学校での実践例を中心に―」経済教育学会『経済教育』第32号、2013年9月、pp.141-151。

■研究者詳細

http://research.kosen-k.go.jp/researcher-list/read0150525