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電気電子システム工学科 若松孝 教授

タンパク質を凝集し結晶化させる

タンパク質は生命の源、その結晶は、医薬品や機能性食品の開発に不可欠、その製作に挑む。

どんな研究をされていますか

 今中心的にやっているのは、タンパク質の結晶を早く作れるようにする、また、結晶に至る過程がわかるようにする、という研究です。タンパク質は生命の源で、その結晶は、医薬品(たとえば免疫抗体反応の検査薬品)や機能性食品(各種サプリメント)の開発に欠かせないものです。生体に含まれるタンパク質の結晶を作るまでには、(1)生体試料を細かく砕く、(2)遠心分離機とフィルターにかけて精製する、(3)凝集し結晶化させる、というステップがあります。凝集の状態では顕微鏡で見えず、結晶になってはじめて、タンパク質の形の違い、それゆえの機能の違いが見えるようになります。100万種類もあると言われるタンパク質の、それぞれの機能を探していく、すなわち薬などに使える可能性のあるタンパク質を見つけだす(スクリーニングする)ためには、その準備として結晶化させることが必要になります。私の研究室では、この結晶製作ステップのうち(3)を研究の対象としています。
 もうひとつの大きいテーマとしては、学生の卒業研究で、太陽光発電の作成と評価をしています。色素増感型という太陽電池で、電極そのものをカラフルに印刷で作製することができ、太陽電池の用途が広がる期待があります。

タンパク質の研究では、なぜ結晶化過程に着目したのですか

 タンパク質生成では上記(1)も(2)も(3)も、どのステップも簡単ではありません。(1)のステップでは、2008年ノーベル化学賞をとられた下村博士が「家族総動員で大量のクラゲを採取した」と受賞会見で話されていたように、大量の生体試料を用意する必要があります。タンパク質はごく微量しか含まれないからです。(2)のステップでは、タンパク質の固まり(集合体)を作りますが、極力不純物が無いように、すなわち高純度にするためには、工夫と技術が必要です。高純度のタンパク質は、1mgで1万円、1gだと1000万円、というように非常に高価になるものもあります。(3)のステップは、凝集から結晶へ進む際に何か月もの時間がかかることもあり、また進むかどうかもやってみなければわからない、という偶然に左右される工程です。ステップ(3)が、技術上の最大のボトルネックになっているために、タンパク質結晶の製造は、現時点では産業化に至っていません。結晶化の時間短縮や結晶成長のメカニズムの解明が待望されているのです。

集合体とか凝集とか結晶とか、よくわからないのですが

 凝集は、お豆腐を思い浮かべてみてください。お豆腐は、豆乳(大豆のタンパク質の集合体)に、にがり汁(主成分は塩化マグネシウム)を加えて凝集させたものです。結晶にはなっていません。また、小学校の理科の実験で作った塩の結晶や雪の結晶を思い出してみてください。結晶はいつもできるわけではなく、ある条件が整ったときに徐々に結晶になっていきますね。結晶にならなくても塩は塩、雪は雪(氷)ですが、結晶になることではっきりと顕微鏡で見え、その物質の特徴が鮮明になります。結晶というのは、そこにある分子がある一定方向にきれいに並んだものです。

研究は具体的にはどのように進めるのですか

 結晶化する条件は狭く、条件の多くは未知の世界です。試料や試薬の量をマイクロリットル単位で配合を変え、凝集体にするための試行錯誤をします。膨大な回数の作業が必要になるので、通常、タンパク質の結晶化は、何度でも飽きずに疲れずに作業してくれるロボットが使われています。当たりをつけた配合の溶液(コロイド)ができましたら、結晶の生長を待ちます。何か刺激を与えると結晶化が進みやすくなるのではないか、と考えられているため、私のところでは電場を与えています。(強い磁場や強い光で刺激する研究も存在します。)

 タンパク質分子を壊してしまわないよう、優しい刺激(電圧)を与えます。うまく結晶化すればカメラで撮れる状態になりますが、その前の、結晶に進むときのメカニズムもあきらかにしたいと考えまして、レーザー散乱光を使って、見えない過程を可視化する装置を試作しました。この装置に関する特許を現在のところ3つ取得しています。

先生ご自身のことをお聞かせいただけますか

 生まれは福島県いわき市です。山も海もあって自然に恵まれていたので友達と外でも遊びましたが、家で本を読んだりプラモデルを作ったりするのも好きでした。星の観測も好きで、自分で望遠鏡を作ったこともあります。大学は物理、大学院は電子工学に進みました。電子工学のほうが物理よりも広い対象を研究できると思ったからです。そして就職先として高専を選んだのは、出身地にも高専(福島高専)があって、高専を身近な存在と感じていたからです。タンパク質に関しては素人ですが、光を使った分析や電子材料を専門としていましたので、生体の高分子と考えればそれほど縁遠いものでもないと思えて、やってみることにしました。

教え子からひとこと  電気電子システム工学科5年 田村 旺大さん

 当研究室では、電気電子材料を中心に幅広い分野で研究しています。主に、次世代の発電方法として期待される色素増感型の太陽電池の作製・評価、将来的には、宇宙船内での研究も視野に入れられるタンパク質の効率的な結晶化の研究を行っています。中学生のみなさんは、若松研究室へ入って、この研究を発展させてみてはいかがでしょうか。

 高専は研究テーマの自由度があるので、地域の企業さんと連携したテーマをやってみることも可能です。たとえば、栄養価の高いサプリメントを開発されるならば、その成分の裏付けをするなど、ご協力ができるかもしれません。実験機器などのご相談をさせていただくこともできるかもしれません。研究・技術協力を通して地域貢献になるようなことができれば幸いと思います。

参考文献(抜粋)

Observation of electric-field induced aggregation in crystallizing protein solutions by forward light scattering:T. Wakamatsu, S. Toyoshima, and H. Shimizu, Applied Physics Letters, 99(15), 153701-1-3, 2011年10月

講演・口頭発表(抜粋)

Emission-angle-dependent photoluminescence of rubrene thin films on metal:Takashi Wakamatsu,The 8th International Symposium on Organic Molecular Electronics, 2014年5月15日

研究者詳細

http://research.kosen-k.go.jp/researcher-list/waka1963